安全で信頼のおける計算機システムの研究・開発
計算機システムを構成する要素(ハードウェア、ソフトウェア)にいつか故障(フォールト)が発生する事は避けられない。
故障が生じてもそれにより発生する誤り(エラー)を検知し、システムの出力に障害(フェイラー)として現れる前に対処すれば
ユーザにサービスを提供し続けることが出来る。この考え方がフォールトトレランスの基本であり、コンピュータが使われ始めた
初期の頃から研究・開発が行われてきた。フォールトトレランスの考え方はデバイスレベル、回路レベル、アーキテクチャレベル、
システムレベル、アプリケーションレベルなど、物理的な下位階層から理論的な上位階層まであらゆる階層で適用できる、
さらには階層を跨った適用も出来る概念であり、様々な実現方法が考えられる。
「フォールトトレランス」とは『故障(フォールト)』に『耐える(トレラント)』ことを意味し、ネガティブな印象を与えるため、
近年では『ディペンダブル(信頼性のある、頼みになる)』というポジティブな印象を与える言葉として使われることも多い。
当研究室では、社会生活で安心して依存することができる、ディペンダビリティの高い計算機システムの実現を目指し、
特に回路レベルの設計を中心に研究を行っている。
ディペンダブル ネットワークオンチップ (Dependable Network-on-Chip)
集積システム(LSI)の微細化・大規模化が進むにつれ、様々なアプリケーション製品の高機能化が図られ、VLSI内収容コア数は
急速に増加している。非常に高い信頼度を必要とするアプリケーションの場合、コア故障による該当機能の処理能力喪失を防ぐために、
コアの冗長化や故障検出・診断情報に基づく動的再構成が必要となるが、従来のバス接続構成ではフレキシビリティ実現に制約が大きかった。
これらを解決する一つの手法が大域非同期局所同期方式のネットワークオンチップ(Globally-Asynchoronous Locally-Synchronous
Network-on-Chip)であるが、コア故障の検出や診断の手法、それに基づく動的再構成方法、単なる冗長化では高コストとなることなど、
様々な課題がある。本研究では、自動車制御をアプリケーションの具体例として用い、GALS-NoC構成によるディペンダビリティの高い計算機システムを実現する設計方式を確立しました。
非同期式回路設計
トランジスタサイズの減少により素子のスイッチング速度はスケーリング則に従って向上する一方、配線は幅を減少させると抵抗値が
大きくなるため、配線遅延をスケーリング則に従って減少させることは困難となる。また、配線間隔の減少は隣接配線間容量の増加を招き、
クロストークと呼ばれる隣接配線の信号遷移に伴う信号遷移速度の変動を引き起こしやすくなる。さらに、供給電源電圧の低下により、
絶対値としては同じ少量の電圧変動でも、大きな遅延変動を引き起こす。そのため、システム全体を単一のグローバルクロックに同期
させて制御を行う同期式システムでは、期待されるスイッチング速度の向上がシステム全体の性能向上に直接反映されなくなると予測される。
これに対し、事象生起の因果関係を駆動原理とする非同期式システムは、グローバルクロックの制約がなく、製造プロセスの微細化に
伴って素子のスイッチング速度の向上をそのまま直線的にシステムの性能向上に反映し得る。また、非同期式システムはクロック信号の
代わりに要求-応答ハンドシェイクプロトコルに基づいて動作する事象駆動型論理システムであり、要求信号に対する応答信号が返らなければ
次の動作が行われない。そのため、予測される範囲内の遅延変動が生じても正しく動作する遅延非依存(Delay-Insensitive)特性を持つと
同時に、それぞれ異なるタイミングで動作するモジュールを結合して利用することが容易となる。
非同期式回路を設計する場合、素子や配線の遅延に関して設ける仮定、すなわち遅延モデルが重要な役割を果たす。
本研究室では、遅延の予測できる局所領域の設計において遅延情報を利用した最適化を行うことのできるScalable-Delay-Insensitive
モデル(SDIモデル)と呼ばれる遅延モデルに基づく非同期式回路設計を軸として、様々な非同期式回路設計に関する研究を行っている。
- 32bit非同期式プロセッサTITAC-2
- 非同期式回路設計用スタンダードセルライブラリ構築
- 非同期式ハードウェアトロイの検知
- Near-Threshold, Sub-Threshold領域の高信頼VLSIシステムの実現
関連実績
SE教育・各種アプリケーション開発
計算機システムは年々高度化・複雑化しており、そのメンテナンスには高度な知識が必要となっている。また、ユーザにとっては
利便性が高くなっている分、システムに自ら手をかけ使いやすくするなど、システムメンテナンスに対する意欲を持つ事が少なくなっている。
そのため、計算機システムの管理を行う事が出来る人材や計算機システムの設計を行う事が出来る人材の育成が課題となっている。
研究室で使用している実際の計算機システムの管理や予備計算機システムを用いた一からの仮想計算機システムの構築などを通し、
これまでの豊富な計算機管理の知識・ノウハウを継承する方式の確立を目指す。
各種アプリケーション開発
- 動的データベースによる汎用大学事務システムの開発
- 降水データAPHRODITE ダウンロードシステムの開発
- 学部・学科求人票検索システムの開発
- 津軽弁収集システムの開発